第5週 優れたデザインとは?

2011年8月5日(金) 10:49

今回は「グッドデザイン賞」についてお話しします。
「グッドデザイン賞」は総合的なデザインの推奨制度で、1957年からスタートした
旧・通産省(現・経済産業省)によるグッドデザイン商品選定制度が母体となって
います。
赤い円の中にGの文字が白抜きされたマークをお店のカタログなどでご覧になったことが
ある方も多いのではないでしょうか?この「Gマーク」は50年以上に渡り、
「よいデザイン」の指標として親しまれています。
現在では、グッドデザイン賞にもいろいろな種類がありますので興味がある方は是非、
インターネットで「グッドデザイン賞」を検索してみてください。
サイトには、皆さんが「あっ、これは知っている」と思うようなGマーク商品が
いろいろ掲載されているはずです。

このグッドデザイン賞は「よいデザイン」の指標ということですが、どんなものが
「よいデザイン」なのでしょうか?
以前から、デザインはコミュニケーションであり、つくり手(提案する側)と
利用者(受け取る側)の気持ちがつながることが重要とお話ししてきました。
したがって、優れたデザインとは、利用者の身になって考えられ、
きちんとつくり手の利用者に対する気持ちが伝わるようなデザインだと言えると
思います。

実は、グッドデザイン賞の中にはロングライフデザイン賞という部門があります。
このロングライフデザイン賞は10年以上にわたり生産され、多くの人々に長く
愛されてきたものが対象です。製品が長く生産されているということは、利用者に
支持されているということでもあります。
必ずしも新しい形や奇抜な色でカッコがいいものだけが優れたデザインなわけではなく、
長い間使い続けられるものも優れたデザインと言えるでしょう。
例えば、“?(はてな)”マークのマジックインキとか、黄色いソフトボトルの
木工用ボンド、刃を折って使い続けるカッターナイフ、黄色と深緑の表紙の
スケッチブックなどがロングライフデザイン賞に選ばれています。
新潟県の金属洋食器も選ばれています。
普段は必ずしも目立たず、あまり意識されていないかも知れませんが、
「グッドデザイン」は私たちの身近なところにたくさんあるのです。

ちなみに、長岡造形大学の教員や卒業生達が手がけた作品、製品、そして大学の
校舎など、2010度には「デ大」がらみの6件がグッドデザイン賞を受賞しています。

第4週 観察力の鍛え方

2011年8月1日(月) 16:28

先回の放送では、「今は絵が描けないけれど、それでもデザインを勉強できるのか、
これから絵がうまくなれるのか」という質問のメールにお答えしました。
今は上手く絵が描けなくても、「それなりの方法」で勉強すれば今よりもっと
うまくなれるはずだとお話ししました。
また、具体的な方法の一部を体感していただくために、「授業体験会」に
参加してみてくださいと申し上げたのですが、メールをくださった方は
参加されたでしょうか?
機会があれば、オープンキャンパスで体験していただけますので、
是非参加していただいて、どんな方法で学べば絵が描けるようになるのかを
体感してみてください。

ここでは一つヒントをお話しします。デッサンや描写の上達には、
まず対象物をきちんと観察することが重要です。
これはなぜでしょうか?例えば、デジタルカメラで写真を撮るときに、
レンズが汚れていたり、ピントが合っていなかったりすれば、
どんなに高級なカメラを使ってもいい写真は撮れませんよね?
逆に、いい写真が撮れても、印刷に失敗すればやはりいい写真は手にできませんね?
デッサンや描写で対象物を観察して記憶することはデジカメで撮影することに
似ています。
記憶した対象物の姿を画用紙に描く力がプリンタで印刷することに相当するわけです。
ですから、デッサンや描写が上手くなるには描く技術も大切ですが、まずは
しっかり対象物を観察する方法、それを記憶する方法を学ぶことが大切です。

絵が下手だと嘆く人の多くは目の前にある対象物をよく観察せずに、元々頭の中にある
イメージだけで描こうとしているケースが多い気がします。
まずは目の前のものを丁寧に観察しましょう。手で触れることや、「遠近法」など
ものの見え方を理解する科学的な知識も役に立ちます。
「デ大」は、デザインを総合科学ととらえていますので、単に「よく観察して身体で
対象物の特徴を掴みなさい」というだけでなく、透視図法や視覚効果など、
ものの見え方の仕組みを理解するのに役立つ科学的な知識もお伝えしています。

第3週 伝える力を磨くには?

2011年8月1日(月) 16:25

先回の放送では、言葉で伝える代わりに、作品や、製品や、提案を通して
あなたの「おもい」を誰かに伝えるのがデザインの目的であり、
デザインは言葉と同じコミュニケーションの手段なのだとお話ししました。

今回は、あなたのおもいを伝えるためのデザインという仕事に取り組むためには
どんな能力を鍛えたらいいのかについて考えてみます。

皆さんは、デザインを仕事にするにはどんな技術が必要だと思いますか?
絵を描いたり、言葉で説明したりする力を想像されるかも知れません。
確かに絵がうまく描けたり、説明が上手なほうが有利ですが、大事なのは
絵や言葉による表現力だけではないのです。
誰かにあなたのおもいを伝えるためには、何よりもまず、あなたに「伝えたいおもい」が
なければ何も伝えられません。
だから、「伝えたいおもい」があるならば、その伝え方を身につける必要があるのです。

では、あなたが伝えたい気持ちをどうしたら伝えられるか、その方法について
考えてみましょう。
デザインの勉強をしていく上で、とても役に立つのはデッサンや描写など、
絵を描く力です。
なぜそんな力が必要なのでしょうか?それは、あなたのおもいを正確に相手に
伝えられなければならないからです。

絵を描くことを、デジタルカメラで撮影した写真をプリントすることに例えてみます。
デジタルカメラはどのような機能で構成されているかというと、簡単に言えばレンズ、
そして撮影した画像を保存するメモリカードです。
また、その画像をプリント写真にするにはプリンタも必要です。
レンズ、メモリカード、プリンタのうちのどれかが欠けていたり、低品質だったりすれば
良い写真は手にできません。
これを絵に置き換えると、デッサンや描写の対象物をよく観察する力、
そして見た対象物の姿を記憶しておく力、そしてそれを自らの手で紙に描く力です。
もし観察力が欠けていたら、たとえ繊細なタッチや色の感覚を鍛えても、
何を描いたのかが人に伝わるような絵は描けません。

「デザインは勉強したいが、絵が下手」という人はよくいますが、絵が上手く描けない
原因は、表現技術よりもむしろ観察力にあることが多いのです。
対象物を見ているようでいて、実は対象物をきちんと見ずに、先入観で
対象物らしきものを描いているに過ぎないということがあります。

きちんと対象物を見る観察力はどうしたら鍛えられるのでしょうか?それなりの
方法があります。
具体的な方法の一部を体感していただくために、まずは週末に行われる長岡造形大学の
「授業体験会」に参加してみてください。
どんなことを手がかりに対象物の特徴をとらえれば良いのかをご理解いただけると
思います。

第2週 デザインとコミュニケーション

2011年8月1日(月) 16:22

皆さんは、デザインと聞いて何を思い浮かべますか?
単に、色や形や素材などを考えることだと思っていませんか?
もちろん、色や形や素材を選ぶこともデザインの重要な要素ですが、
それらはある目的を果たすための手段に過ぎないのです。

洋服の色や素材を例に考えてみましょう。
女性なら今日はかわいい感じで、とか少し大人っぽくとか人に与える印象を
イメージしながら色や生地を意識してその日に身につける洋服のコーディネートを
するのではないでしょうか?
仕事に行くときの服装や学校に行くときの服装、遊びに出かけるときの服装、
デートの時の服装など、どんな場面か、どんな相手と会うのかによっても選ぶ服装を
変えると思います。
洋服の色や素材は自分のイメージや印象をかたちづくるコミュニケーションの手段、
つまりメッセージなのです。
千回の放送では、「デザイン」とはあなたの「おもい」を誰かに伝える
コミュニケーションだとお話ししましたが、
その意味で洋服のコーディネートもデザインなのです。

今度はデザインと言葉の関係を考えてみましょう。
言葉とコミュニケーションとは比較的結びつきやすいと思います。
皆さんはある場面に出くわして、思わず「これって○○じゃない?」と思ったり、
「あっ、××だ!」と言葉を発してしまったことはありませんか?
場面も言葉で表現できますよね?逆に、ある言葉やセリフから場面を想像して
表現することもできます。
一コマ漫画やイラストを思い浮かべるとお分かりいただけるのではないでしょうか。

長岡造形大学の視覚デザイン学科には、1枚の写真を与えられて、その写真に
漫画の吹き出しのような言葉を付けたり、言葉やセリフから連想される場面を
描いたりする課題に取り組む演習科目があります。
言葉と場面の関係を考えることで、アイディアを生み出すトレーニングを
しているのです。
こうしたトレーニングを通して、ポスターやイラストなどのデザインを手がける際に、
相手に「伝えたい内容」を言葉なしに届けること方法を身につけていきます。
同じ課題でも、100人いれば100通りのアイディアが生まれます。
他の人の案を見て、自分では気づかなかった発想に驚くこともあるのです。

第1週 デ大のデザイン

2011年8月1日(月) 15:42

私たちは、日々たくさんのものに囲まれて生活しています。
日用雑貨品、家具、文房具、家電製品、洋服、乗り物、
さらには、私達が暮らしているこのまち。そして、まちを構成する
道路、家、公園などです。
これらは、全て誰かの手でデザインされたものです。
美しいもの、使いやすいもの、目立つものももちろんですが、
普段、それほど意識されていないもの、地味で目立たないものであっても、
自然に存在するもの以外のかたちあるものの大部分は、誰かがその形、色、材料などを
決めてつくられています。
この番組では、「デザインって何?」「これもデザイン?」といったことを、
まじめに、楽しくお伝えしていきます。

第1週はまず、私が勤務する世界で唯一つの『デ大』 長岡造形大学を紹介します。
長岡造形大学はデザインの大学だから「デ大」なのですが、
一体どんな大学なのでしょうか?
長岡造形大学は1993年に世界初のデザインの専門大学として開学しました。
今年で18年目を迎えましたが、当初から「デザイン」を、あなたの「おもい」を
作品や製品、提案などを通して誰かに伝えるコミュニケーションの一つととらえて
教育や研究を行ってきました。
単なる自己表現にとどまらず、人を助ける、人の役に立つ、人を楽しませる、
人を幸せにするものが「デザイン」だと考えているのです。
その点では、デザインは美術の一分野というよりも、むしろ人に訴えかける美術が
デザインの一分野であると考えることもできるかも知れません。
だから長岡造形大学は、いわゆる「美大」、「芸大」ではなく、工業デザインや
ヴィジュアルデザインをはじめ、美術や建築といった分野までも包含する
「デザインの大学」(=「デ大」)なのです。

では、この大学はこれからどんな大学を目指していくのでしょうか?
長岡造形大学は私立の大学ですが、元々は長岡市の要請で、市民の期待を背負って
生まれた大学です。
市民生活に密着した、ものづくりのための人材育成を目的とする、
地域や市民の皆さんと共に生きる大学として開設されました。
学内では、近隣のこども達が遊んでいる姿や犬の散歩をさせる市民の方々の姿が
日常的に見られます。
私はこの大学は公園みたいなものだと感じています。
いつもキャンパス周辺の市民の方やこども達が気軽に訪れ、芝生で遊んだり、
散歩したりでき、ここに集う様々な人がおもいおもいの居場所を見つけて利用できる
出会いと交流の場になっているからです。
この大学が今後ますます市民交流の場として活用され、人々の交流の輪が
キャンパス内に点々と広がっていく、そんな日がいつか実現するのではないかと
期待しています。